
機械は一日八時間あるのに、実際に削っているのは三時間。
金属加工・機械加工では、これがよく起きます。
遊んでいるわけではありません。
一個ずつ図面が違うので、そのたびに段取りを組み直しているからです。
今回は、その組み直しがどこから来ているのかを分解します。
次に来る図面が、前と同じとはかぎらないからです。
同じ部品を千個作る仕事なら、段取りは一度で済みます。
一個か数個の注文が続けば、そのたびに組み直します。
材料も、刃物も、押さえ方も変わります。
変えるには、機械を止めて手で替えます。
替えている間、その機械は何も削っていません。
六つの工程に分かれます。
一つ目、図面の確認と加工方法の検討。
二つ目、ご注文の受付と手配。
三つ目、材料と工程の段取り。
四つ目、加工と品質の確認。
五つ目、検査成績書と出荷。
六つ目、請求と仕入れの照合。
手間が生まれるのは、三つ目と四つ目です。
三つ目の材料と工程の段取りで、機械が止まっている時間が決まります。
四つ目の加工と品質の確認で、削った物が図面どおりかを確かめます。
今回は、三つ目を分解します。
段取りの手間が、個数ではなく図面の枚数で決まるからです。
千個の注文でも、段取りは一回です。
一個の注文が千件来れば、段取りは千回です。
削っている時間は、どちらもそう変わりません。
変わるのは、止めて替えている時間のほうです。
小さい注文が増えるほど、機械が止まる時間の割合が上がります。
過去の仕事が、注文の番号でしか並んでいないからです。
三年前に、よく似た形を削ったかもしれません。
そのときの刃物も押さえ方も、記録には残っています。
残っているのは、その注文の書類の中です。
形が似ていることは、番号からは分かりません。
だから、探すより一から考えるほうが早くなります。
使う材料の寸法が、図面ごとに違うからです。
棚に丸棒があっても、径が合わなければ使えません。
大きい材料から削り出すと、時間も切り粉も増えます。
ちょうどの材料を頼むと、届くまで待ちます。
待っている間、その仕事は始められません。
他の仕事を先に入れると、その分の段取りがまた増えます。
削る時間より、段取りの時間のほうが読みにくいからです。
削る時間は、寸法と材質から計算できます。
段取りの時間は、その形をどう押さえるかで変わります。
押さえ方は、図面を見た人の判断です。
判断できる人は、たいてい現場に立っています。
見積りが、現場の手が空くまで待つことになります。
寸法が一か所変わると、押さえ方から見直しになるからです。
穴の位置が五ミリ動いたとします。
押さえていた場所と重なることがあります。
重なれば、別の押さえ方を考え直します。
刃物の届く向きも変わります。
図面上は一か所でも、現場では段取りが別物になります。
四つとも、同じ一件の注文のことです。
それでも、決まる順番も置き場も揃っていません。
揃っていないので、組む作業が図面の枚数だけ起きます。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
金属加工・機械加工の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、この止まり方は金属加工・機械加工でだけ起きるのですか?
毎回、違う物を作るからです。
同じ物を作り続ける仕事なら、段取りは最初の一回です。図面が毎回違えば、そのたびに機械を止めて替えます。
Q2.なぜ、機械を増やせば解決するというわけにいかないのですか?
止まっている理由が、機械の台数ではないからです。
増やしても、段取りを組むのは人です。組める人が増えなければ、止まっている時間の割合は変わりません。
Q3.なぜ、小さい注文ほど採算が合いにくいのですか?
段取りの時間が、個数で割られないからです。
千個なら、段取りの一時間は一個あたり数秒です。一個なら、その一時間がまるごと一個に乗ります。
Q4.なぜ、熟練の方に仕事が集中するのですか?
押さえ方の判断が、経験の中にあるからです。
図面から段取りを起こす部分は、書かれた手順になっていません。だから、判断できる人のところで列ができます。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一台、一日のうち実際に削っていた時間を計ることからです。
動いていた時間と止まっていた時間の比が出ます。止まっていた時間の中身が、段取りです。
金属加工・機械加工の時間は、削る速さだけでは決まりません。
段取りを何回組み直すかで決まります。
組み直す回数は、個数ではなく図面の枚数です。
小さい注文が増えるほど、止まっている時間の割合が上がります。
図面を選べないなら、段取りの起こし方を変えるしかありません。
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