
小さな事件のはずが、資料の山になった。
弁護士事務所では、これがよく起きます。
手間が大きいのは、争点が難しいからとはかぎりません。
読む量を、こちらが決められないからです。
今回は、その決められなさがどこから来ているのかを分解します。
資料が、出す側の都合の形のまま届くからです。
依頼者からは、手元にある紙をそのまま。
相手方からは、相手が選んだ順で。
役所からは、役所の様式で。
どれも同じ一つの出来事のことを書いています。
それでも、並び順も呼び名も揃っていません。
六つの工程に分かれます。
一つ目、相談受付・初期対応。
二つ目、証拠収集・事実調査。
三つ目、法的分析・戦略立案。
四つ目、文書作成・手続き進行。
五つ目、交渉・裁判対応。
六つ目、事務処理・事後対応。
手間が生まれるのは、二つ目と三つ目です。
二つ目の証拠収集・事実調査で、読む量が決まります。
三つ目の法的分析・戦略立案で、その量がそのまま時間になります。
今回は、二つ目を分解します。
読む量を決めているのが、こちらではないからです。
相手方が千枚出せば、千枚読みます。
十枚で足りる事件でも、相手が千枚出せば千枚になります。
争点の数とは関係がありません。
だから、着手の時点では何時間かかるか言えません。
見積もれないものは、他の仕事の予定にも入れられません。
届いた順と、起きた順が違うからです。
資料は、出せる人から出せる分だけ届きます。
その順番は、出来事が起きた順とは関係ありません。
事実を組み立てるには、起きた順に並べ直す必要があります。
並べ直すには、全部に目を通して日付を拾うしかありません。
読み飛ばした一枚が、あとで争点になることがあります。
前に調べた結果が、事件の中にしか残っていないからです。
調べた条文も、見つけた裁判例も、その事件の記録に入ります。
次に似た論点が来ても、どの事件で調べたかは覚えていません。
覚えていないので、また最初から探します。
探し方は人ごとに違うので、たどり着く先も毎回同じとはかぎりません。
事務所として調べた量は増えているのに、使える形では貯まりません。
何を書くかが、読み終わるまで決まらないからです。
主張の骨は、資料を読んだあとにしか立ちません。
読み終わるのが遅れれば、書く時間はそのぶん後ろへ動きます。
期限は動かないので、削られるのは書く時間のほうです。
急いで書いた書面は、あとで補充することになります。
補充のたびに、また読み直しが起きます。
任せる前に、事件の前提を伝える時間が要るからです。
誰が何をした事件なのかは、資料の中にしかありません。
伝えるには、先生が手を止めて説明します。
止めた分だけ、先生の仕事は後ろへ動きます。
だから、いちばん忙しい先生ほど人に頼めません。
事実が整理された形で在れば、渡すのに先生の時間は要りません。
四つとも、同じ一つの出来事のことを書いています。
それでも、並び順も呼び名も様式も揃っていません。
揃っていないので、読む量は相手が出した枚数で決まります。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
弁護士事務所の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、この読む量の多さは弁護士事務所でだけ起きるのですか?
こちらが集めた資料だけでは、足りないからです。
自分で作った物だけで進む仕事なら、量は自分で決められます。争いごとは、相手が出してきた物も全部見ないと組み立てられません。
Q2.なぜ、着手のときに時間の見積もりが立たないのですか?
資料の量が、着手のあとに決まるからです。
受任した時点で分かるのは争点の数だけです。読む枚数は、相手方の対応で何倍にも変わります。
Q3.なぜ、気をつけていても防げないのですか?
読み飛ばしの数が、枚数で決まるからです。
同じ集中力で読んでも、枚数が倍になれば見落としも増えます。注意の量ではなく、量そのものの問題です。
Q4.なぜ、人数が少ない事務所ほど大きく出るのですか?
読む人と、書面を作る人が同じだからです。
読み終わる時期が遅れれば、書く時間がそのまま削られます。分けられる事務所なら、並べて進められます。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一件、届いた資料の枚数を数えることからです。
枚数と、実際にかかった時間を並べれば、量と手間が比例していることが自分の事務所の数字で分かります。
弁護士事務所の手間は、争点の難しさでは決まりません。
相手が出してきた枚数で決まります。
枚数が決まるのは、受任したあとです。
だから、着手の時点では何時間かかるか言えません。
読む量を減らせないなら、読み方の形を変えるしかありません。
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