
段ボール二十箱と伺っていたのに、当日は三十五箱ありました。
引越し業では、これがよく起きます。
少なく言われたわけではありません。
ご自分の荷物の量を、正確に数えている方はほとんどおられないからです。
今回は、そのずれがどこから来ているのかを分解します。
見積りの根拠になる量が、お客様の記憶から出てくるからです。
お電話では、部屋の広さと家族の人数を伺います。
そこから、おおよその量を見込みます。
実際の量は、押し入れの中まで開けないと分かりません。
開けるのは、当日か、下見に伺ったときです。
下見に伺うには、こちらの人と時間が要ります。
六つの工程に分かれます。
一つ目、問い合わせ・相談。
二つ目、見積もり・契約。
三つ目、作業計画・準備。
四つ目、引越し作業。
五つ目、顧客対応・事後処理。
六つ目、請求・事務処理。
手間が生まれるのは、一つ目と二つ目です。
一つ目の問い合わせ・相談で、量の見込みが立ちます。
二つ目の見積もり・契約で、その見込みが値段と車の大きさになります。
今回は、一つ目を分解します。
量を数える言葉を、お客様が持っておられないからです。
「箱でいくつですか」と伺っても、箱に詰める前です。
「タンスは何本ですか」なら答えられます。
答えられる単位に置き換えて、一つずつ伺います。
伺った品物から、こちらが箱の数に直します。
直した数が合っているかは、当日まで分かりません。
持ち物の量が、部屋の広さでは決まらないからです。
同じ二部屋でも、住んでおられた年数が違います。
長く住まわれた家ほど、押し入れの中が増えます。
外から見える家具の数は、あまり変わりません。
変わるのは、見えないところに入っている量です。
だから、間取りだけでは見込めません。
車の大きさを、見積りの時点で決めているからです。
申告の量から、二トン車か四トン車かを決めます。
当日、入りきらないと分かります。
その場で大きい車を呼ぶことはできません。
二回に分けて運ぶと、時間が倍かかります。
後ろに入っている別のお客様の予定も動きます。
建物の側の条件を、お客様が意識しておられないからです。
階段しかない、道が細い、駐車できる場所が遠い。
住んでおられる方には、当たり前の風景です。
だから、聞かれないと出てきません。
こちらから一つずつ伺うしかありません。
伺い漏れた一つが、当日の作業時間を大きく変えます。
下見に伺う人の手が、そこで取り合いになるからです。
三月は、引越しも問い合わせも集中します。
下見に伺えば、量は正確に分かります。
伺う人は、当日の作業にも出ています。
下見を減らすと、電話だけで見込むことになります。
見込みが荒くなれば、当日のずれも大きくなります。
四つとも、同じ一件の引越しのことです。
それでも、確かな数が出るのは当日です。
当日なので、決めたあとで直すことができません。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
引越し業の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、このずれは引越し業でだけ起きるのですか?
値段を決める材料を、お客様の側が持っておられるからです。
こちらで測れる仕事なら、根拠は自分で確かめられます。荷物は相手の家の中にあるので、伺うか、見に行くしかありません。
Q2.なぜ、下見に必ず伺うというわけにいかないのですか?
伺うのにも、人と時間と交通費がかかるからです。
小さな案件で往復すると、その分だけ利益が減ります。だから、規模を見て伺うかどうかを分けています。
Q3.なぜ、写真を送っていただいても足りないのですか?
写らない場所に、量の多くが入っているからです。
押し入れも、物置も、閉じたままでは写りません。開けて撮っていただくところから、お願いすることになります。
Q4.なぜ、当日のずれが後ろの予定まで動かすのですか?
同じ車と同じ人が、その日に何件も回るからです。
午前が二時間延びれば、午後のお宅は二時間お待たせします。一件のずれが、その日の全部に伝わります。
Q5.何から始めればよいですか?
まず十件、見積りの箱数と当日の箱数を並べることからです。
どちらへどれだけずれているかが分かります。見込み方を直す手がかりになります。
引越しのずれは、見積りが雑だから起きるのではありません。
量を正確に知っている人が、どこにもいないからです。
お客様も、押し入れの中までは数えておられません。
だから、確かな数が出るのは当日になります。
当日まで待てないなら、見込みの立て方を変えるしかありません。
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引越し業の六つの工程が、そのまま並んでいます。
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