
刷ってしまえば、間違いは全部やり直しになる。
印刷業では、これが全員の頭にあります。
だから、刷る前に何度も確かめます。
確かめること自体は正しい。問題は、確かめる材料が口約束のままだということです。
今回は、その材料がどこで文字にならずに残るのかを分解します。
決めた内容の多くが、電話とメールの本文にしか残っていないからです。
紙の種類、色の指定、折りの向き、納期、部数。
どれも大事な条件です。
しかし、決まる場所はやりとりの途中で、形の決まった欄ではありません。
だから、機械にかける直前に、人がやりとりを読み返して拾い集めます。
拾い漏らせば、刷ってから分かります。
六つの工程に分かれます。
一つ目、仕様の決定とデザイン案。
二つ目、お見積りとご発注。
三つ目、資材と印刷機の段取り。
四つ目、印刷・加工と品質の確認。
五つ目、納品後の対応と修正依頼。
六つ目、請求と入金の確認。
手が止まるのは、一つ目と四つ目です。
一つ目の仕様の決定とデザイン案で、条件が文字になりません。
四つ目の印刷・加工と品質の確認で、その分を人が確かめ直します。
今回は、一つ目を分解します。
お客様が思っている仕上がりと、印刷の条件が、別の言葉で語られるからです。
お客様は「しっかりした紙で」と言います。
現場が要るのは、銘柄と厚みです。
この間を埋めるのは、担当者の経験です。
経験なので、担当が変われば聞き方も変わります。
聞き方が変われば、抜ける項目も変わります。
直した箇所と、直っていない箇所が、一つの場所に並んでいないからです。
赤字は紙かPDFに入ります。返事はメールの本文に入ります。
二つは別々なので、どこまで反映したかは人が突き合わせます。
突き合わせに漏れがあれば、また一往復増えます。
往復のたびに、納期の余裕が減ります。
直した箇所が一覧で残れば、往復は数えられる形になります。
似た仕事を過去にやっていても、探し出せないからです。
同じ判型、同じ紙、同じ加工の仕事は、必ず過去にあります。
しかし、案件は日付と客先で並んでいます。
条件で引けないので、思い出せる人に聞くことになります。
聞ける人がいなければ、また一から積み上げます。
条件で引ける形なら、下書きはその場で出てきます。
何を決めたかが、後から示せる形で残っていないからです。
口頭で決まった条件は、記憶の勝負になります。
記憶の勝負では、こちらが引き下がることになります。
だから、刷る前の確認に人を張り付けます。
張り付けても、条件が文字になっていなければ見落とします。
決めた時点で文字になっていれば、確認する対象がはっきりします。
聞くべき項目が、その人の順番でしか出てこないからです。
どの順で何を聞けば抜けないか。それは経験の中にあります。
書いていないので、新しい人は抜けます。
抜けたことに気づくのは、段取りに入ってからです。
過去の案件から聞くべき項目が出てくれば、順番は紙の側に移ります。
人に残るのは、お客様の言葉を条件に置き換えるところです。
六つの工程ごとの一覧は、業種ページに置いてあります。
この記事では「なぜそうなるのか」だけを書きました。
「どの作業をAIに任せられるか」は、下のページに全部並んでいます。
印刷業の六つの工程と、できること一覧
AIを実行から外す。ここが線です。
印刷業でいえば、やりとりから条件を拾い出すところが機械、その仕上がりで通すかどうかが人です。
人がやること。どこを機械に任せるかを決めて、出てきた結果を確認する。
AIがやること。読み取り、下準備、下書き。そして処理の型を一度だけ作る。
機械がやること。計算、突き合わせ、写し、繰り返し。
AIは百件なら正確です。一万件になると壊れます。
だから、型はAIに作らせ、実行は機械に渡します。
Q1.なぜ印刷業でAIの活用が必要なのですか?
確認に人が張り付いている理由が、条件が文字になっていないことだからです。
刷ってからの間違いは全部やり直しです。だから確認を厚くします。厚くする代わりに、条件を先に文字にするほうが早く済みます。
Q2.なぜ、校正の往復は減らないのですか?
直した箇所と直っていない箇所が、別々の場所にあるからです。
突き合わせるのは人なので、漏れれば往復が増えます。増えた分だけ納期の余裕が減ります。
Q3.なぜ、AIに校了の判断を任せてはいけないのですか?
刷ってしまえば戻せないからです。
差分の洗い出しは機械が担えます。しかし、この状態で刷ると決めるのは人の仕事です。実行は機械に、判断は人に残します。
Q4.なぜ、人数が少ない会社ほど効くのですか?
営業も進行も確認も同じ人がやっていると、条件を書き残す時間が最後まで残らないからです。
残らないので、次も口約束のまま進みます。拾い出しを渡せば、その時間が生まれます。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一案件、校正が何往復したかを数えることからです。
往復の数が分かれば、減らす値打ちがあるかどうかも分かります。
印刷業の確認が厚いのは、心配性だからではありません。
刷ってしまえば戻せないのに、決めた条件が文字になっていないからです。
文字になっていないので、人がやりとりを読み返して拾います。
拾い出しは、いま仕様の決定とデザイン案の工程で機械に渡せます。
渡したぶん、確認する対象がはっきりします。
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代表は製造設計を十四年、業務改善のコンサルティング、そしてAIの実装。
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