
三十年やっていても、三十回しか試していません。
農業・農園では、これが効いてきます。
覚えが悪いからではありません。
一作の結果が出るのが、年に一度しかないからです。
今回は、その積み上がらなさがどこから来ているのかを分解します。
そのとき見たことを書き残さないと、翌年には残らないからです。
毎日、葉の色も土の湿りも変わります。
気づいたことは、そのときは頭の中にあります。
収穫が終わるころには、細かいことは薄れています。
翌年、同じ時期に同じ判断をします。
判断のもとになるのは、書き残した分だけです。
六つの工程に分かれます。
一つ目、計画・準備。
二つ目、栽培・育成。
三つ目、収穫・調製。
四つ目、出荷・販売。
五つ目、出荷後のお問い合わせ対応。
六つ目、経理・事務。
手間が生まれるのは、二つ目と六つ目です。
二つ目の栽培・育成で、その年の出来がほぼ決まります。
六つ目の経理・事務で、一年ぶんがまとめて数字になります。
今回は、二つ目を分解します。
同じ条件の年が、二度と来ないからです。
去年は雨が多く、今年は少ない。
同じ日に同じことをしても、結果は違います。
去年の日付をそのまま当てても合いません。
当てるべきは日付ではなく、その年の様子です。
様子を読むもとは、これまでに書き残した記録だけです。
出はじめが、見た目にはほとんど出ないからです。
最初は、数枚の葉に小さな跡が付くだけです。
畑の全部を毎日その細かさで見ることはできません。
はっきり分かるころには、広がっています。
広がってからの手当ては、量も費用も増えます。
早く気づけるかどうかは、見る回数で決まります。
日付の順にしか並んでいないからです。
日誌は、その日ごとに書いています。
知りたいのは「この品種を、この時期に、こうしたとき」です。
品種でも作業でも並べ替えられません。
だから、去年の同じ時期のページをめくって探します。
探している間、畑の作業は止まっています。
判断の手がかりが、言葉になっていないからです。
水をやるかどうかは、土の色と手触りで決めています。
どのくらいで「乾いている」なのかは、書いてありません。
見て覚えていただくしかありません。
覚えるには、同じ場面に何度も立ち会うことになります。
その場面は、年に何度も来ません。
求められる形と、日々つけている記録の形が違うからです。
日誌には、その日やったことを書いています。
申請に要るのは、作物ごと・面積ごとの合計です。
合計を出すには、一年ぶんを数え直します。
書き方が日によって揺れていれば、そこで合いません。
合わせるのに、また一枚ずつ見ることになります。
四つとも、同じ一枚の畑のことです。
それでも、結果が返ってくるのは一年に一度です。
一度なので、経験は年の数だけしか増えません。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
農業・農園の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、この積み上がらなさは農業・農園でだけ起きるのですか?
一回の仕事に、一年かかるからです。
日に何度も回る仕事なら、試した数はすぐ増えます。作物は、まいて収穫するまでが一回です。
Q2.なぜ、他の畑のやり方をそのまま真似できないのですか?
土も天候も、その畑のものだからです。
隣の畑で効いた方法が、こちらで同じに効くとはかぎりません。確かめるには、また一年かかります。
Q3.なぜ、記録をつけるのが後回しになるのですか?
書いてもその年には返ってこないからです。
日々の作業は、やらなければその日に困ります。記録は、書かなくてもその日は困りません。効いてくるのは翌年です。
Q4.なぜ、経験の長い方でも読み違えることがあるのですか?
覚えているのが、印象に残った年だけだからです。
うまくいった年と、大きく失敗した年は覚えています。ふつうの年のことは薄れます。薄れた年のほうが数は多くあります。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一区画、いつ何をしたかを日付と一緒に書き出すことからです。
来年の同じ時期に読み返せる形になります。それが、試した回数を一回ぶん確実にすることです。
農業・農園の難しさは、腕の差だけでは決まりません。
試せる回数が一年に一度しかないことで決まります。
同じ条件の年は、二度と来ません。
だから、頼れるのは書き残した記録だけになります。
回数を増やせないなら、一回から取れる量を増やすしかありません。
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