
置きたくて置いている在庫ではありません。
卸売・商社の倉庫には、いつも半端な数が残ります。
読み違えたからではありません。
仕入れ先の売り方と、得意先の買い方が、そもそも合っていないからです。
今回は、その合わなさがどこから来ているのかを分解します。
数える単位が、仕入れ先と得意先で違うからです。
仕入れ先は、箱で売ります。
得意先は、本で買われます。
一箱が二十四本だとします。
五本ほしいと言われても、一箱でしか入りません。
その差の十九本を、こちらが持つことになります。
六つの工程に分かれます。
一つ目、市場調査と仕入れ先の選定。
二つ目、商談とお見積り。
三つ目、発注と物流の手配。
四つ目、受注と納品。
五つ目、返品・クレームの処理。
六つ目、請求と売掛の消し込み。
手間が生まれるのは、三つ目と四つ目です。
三つ目の発注と物流の手配で、両側の単位と日付を合わせます。
四つ目の受注と納品で、合わせた結果がそのまま納期になります。
今回は、三つ目を分解します。
仕入れの最小の数と、注文の数が、同じ数になることがまずないからです。
仕入れには、これ以下では買えないという数があります。
注文には、そのお客様が使う数があります。
二つは、別の理由で決まっています。
だから、ぴったり同じ数になりません。
差は、こちらの棚に残るか、お待たせするかのどちらかになります。
仕入れ先の品番と、得意先の品番が別々に決まっているからです。
仕入れ先は、自社の品番で伝票を出します。
得意先は、自社の品番で注文を出します。
同じ物なのに、二つの番号が付いています。
つなぐ表は、こちらの中にしかありません。
取引先が増えるたびに、つなぐ番号も増えます。
こちらの在庫だけでは答えが出ないからです。
棚にあれば、明日出せます。
無ければ、仕入れ先に聞きます。
仕入れ先も在庫が無ければ、その先の工場に聞きます。
返事が来るまで、こちらは何も言えません。
待っている間、得意先はこちらの返事を待っておられます。
仕入れ値が、買う量と時期で変わるからです。
同じ商品でも、まとめて買えば安くなります。
為替や相場が動けば、また変わります。
前に出した見積りの値は、そのままでは使えません。
いくらで仕入れられるかを、そのつど確かめます。
確かめてから、そこに乗せる幅を決めます。
こちらで作った物ではないので、行き先が二方向に分かれるからです。
得意先から返ってきた物を、まず受けます。
こちらの在庫に戻せる物と、戻せない物があります。
戻せない物は、仕入れ先へ返す相談をします。
相談が通るまで、どちらの帳簿にも半端が残ります。
一件の返品で、二つの取引を直すことになります。
四つとも、同じ一つの商品のことです。
それでも、数の単位も日付の決まり方も揃っていません。
揃っていないので、間に立つ側がその差を持つことになります。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
卸売・商社の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、この半端は卸売・商社でだけ起きるのですか?
自分では作らず、自分では使わないからです。
作る側なら、売る単位を自分で決められます。使う側なら、必要な数だけ買えます。間に立つと、両側の決まりを同時に守ることになります。
Q2.なぜ、在庫を持たない形にできないのですか?
持たなければ、そのぶんお待たせすることになるからです。
注文のたびに仕入れれば、棚は空になります。そのかわり、届くまでの日数がそのまま納期に足されます。
Q3.なぜ、取引先が増えると手間が急に増えるのですか?
つなぐ組み合わせが、掛け算で増えるからです。
仕入れ先十社と得意先百社なら、品番のつなぎは十と百の掛け算に近づきます。社数ではなく組み合わせで増えます。
Q4.なぜ、利益の幅が薄くなりやすいのですか?
両側の値段を、こちらでは決められないからです。
仕入れ値は仕入れ先が、売値は競合との比べ合いで決まります。動かせるのは、その間の作業をどれだけ短くするかだけです。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一品目、仕入れの最小の数と、一回あたりの注文の数を並べることからです。
二つの差が、その品目で持たされている在庫です。自社の数字で見えます。
卸売・商社の在庫は、読み違いで生まれるのではありません。
両側の単位が違うことで生まれます。
仕入れの最小の数も、注文の数も、こちらでは決められません。
決められない以上、差はどこかに残ります。
単位を変えられないなら、差の持ち方を変えるしかありません。
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