
三回目までは来ていた方が、四回目から来ない。
歯科医院では、これがよく起きます。
治療に不満があったとはかぎりません。
痛みが取れて、次に何をするかが伝わっていないだけのことがあります。
今回は、その伝わらなさがどこから来ているのかを分解します。
治療の全体像を持っているのが、術者だけだからです。
何回で終わるのか。次は何をするのか。なぜ今日はここまでなのか。
どれも、診た人の頭の中では決まっています。
しかし、患者さんに渡るのは口で言った分だけです。
口で言った分は、帰るころには半分になります。
残った半分で、次に来るかどうかが決まります。
六つの工程に分かれます。
一つ目、医院運営・準備。
二つ目、患者受付・予約。
三つ目、治療準備・情報管理。
四つ目、診療・治療。
五つ目、会計・アフターケア。
六つ目、事務・報告。
手間が生まれるのは、四つ目と五つ目です。
四つ目の診療・治療で、説明の時間が削られます。
五つ目の会計・アフターケアで、次の約束が決まります。
今回は、四つ目を分解します。
処置と説明が、同じ一つの枠から出ているからです。
一人あたりの時間は、あらかじめ決まっています。
その中で、麻酔をして、削って、詰めて、説明します。
処置が長引けば、削られるのは説明のほうです。
説明は削っても、その日の治療は終わります。
終わってしまうので、削ったことに気づきにくいのです。
計画が、口で伝えられているからです。
何回かけて、どこまで治すか。歯科医院では最初に決めます。
しかし、それを患者さんが持ち帰れる形にはしていません。
口で聞いた予定は、帰り道で薄れます。
薄れれば、痛みが取れた時点で「もう終わった」になります。
終わったつもりの方に、次の予約の意味は伝わりません。
中断した人が、一覧では見えないからです。
来なかったことは、予約表の空欄として残るだけです。
空欄は、キャンセルなのか中断なのか区別がつきません。
区別するには、カルテを開いて途中かどうかを見ます。
その作業は、診療の合間には起きません。
起きないので、中断は静かに積み上がります。
処置中は、手も目も口の中にあるからです。
術者が書けるのは、手を離してからです。
手を離すころには、次の患者さんが座っています。
だから記録は、昼休みか診療後にまとめて書きます。
まとめて書くと、細かい判断の理由は落ちます。
落ちた理由は、次に診るときには残っていません。
前に何をどこまで説明したかが、残っていないからです。
説明した内容は、カルテの処置欄には出てきません。
出てこないので、次の回にどこから話すか分かりません。
分からないときは、はじめから話し直します。
話し直す時間は、その日の処置の時間から出ます。
歯科医院の一日は、この繰り返しで埋まります。
四つとも、同じ一人の治療のことです。
それでも、患者さんに渡るのは口で言った分だけです。
口で言った分は帰るころには半分になり、その半分で次に来るかが決まります。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
歯科医院の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、この中断は歯科医院でだけ起きるのですか?
一回では終わらない治療が多いからです。
一度で終わる診療なら、途中という状態がありません。歯科は、通っていただくことが治療の一部です。
Q2.なぜ、痛みが取れると来なくなるのですか?
患者さんにとって、痛みが治療の目印だからです。
目印が消えれば、終わったと感じます。まだ途中であることは、こちらが伝えないかぎり伝わりません。
Q3.なぜ、気をつけていても防げないのですか?
説明の時間が、処置の時間と同じ枠にあるからです。
丁寧に説明しようとすれば、処置が押します。押せば次の方を待たせます。注意ではなく、枠の割り振りの問題です。
Q4.なぜ、規模が小さい医院ほど大きく出るのですか?
説明する人と、処置する人が同じだからです。
分けられる医院なら、処置のあとに時間を取れます。同じ人なら、どちらかを削ることになります。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一か月、途中で来なくなった方を数えることからです。
何人が、何回目で止まったかを並べれば、どこで伝わらなくなるかが自院の数字で分かります。
歯科医院で治療が途中で止まるのは、患者さんの意欲の問題ではありません。
治療の全体像を持っているのが、術者だけだからです。
患者さんに渡るのは、口で言った分だけです。
その分は帰るころに半分になり、痛みが取れれば終わったことになります。
枠の長さは変えられませんが、持ち帰れる形は作れます。
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