
半年前の判断が、いまの在庫になっています。
酒造・醸造では、これが毎年くり返されます。
見通しが甘かったからではありません。
仕込んだあとは、足すことも引くこともできないからです。
今回は、その戻せなさがどこから来ているのかを分解します。
いま起きていることが、何か月も先にしか結果として出ないからです。
仕込んだ日に決めるのは、量と配合です。
その日から、発酵が進みます。
温度も、日ごとの様子も変わります。
変わったことを書き残さなければ、あとで理由をたどれません。
たどれるのは、書いた記録だけです。
六つの工程に分かれます。
一つ目、計画・準備。
二つ目、仕込み・製造。
三つ目、製品化・充填。
四つ目、在庫・出荷。
五つ目、販売・顧客対応。
六つ目、経理・事務。
手間が生まれるのは、二つ目です。
二つ目の仕込み・製造で、何か月も先の在庫が決まります。
そのあとの工程は、二つ目で決まったものを運ぶ仕事になります。
今回は、二つ目を分解します。
一度始めた発酵を、途中で止めたり戻したりできないからです。
仕込みの日に、量と配合が決まります。
翌日から、タンクの中で変化が進みます。
多かったと気づいても、減らすことはできません。
少なかったと気づいても、後から足せません。
分かるのは、出来上がってからです。
同じ日に仕込んでも、タンクごとに進み方が違うからです。
同じ配合でも、置き場所で温度が変わります。
温度が違えば、進む速さも変わります。
見た目では、その差は分かりません。
毎日の数字を並べて、はじめて違いが見えます。
並べるには、その日その日に書いておくしかありません。
原料が、年ごとに違うからです。
米も麦も、その年の天候で出来が変わります。
去年と同じ配合でも、同じにはなりません。
去年の記録は、去年の原料の記録です。
今年の原料に合わせて、判断し直します。
判断できるのは、毎日見ている人だけになります。
造った量と動かした量を、外から確かめられる形で残す必要があるからです。
現場で見るための記録は、様子を書いたものです。
届け出に要るのは、量と日付です。
同じ出来事から、二種類の紙を作ります。
書く欄も、集計の単位も違います。
だから、同じことを二度書いています。
どれだけできるかが、出来上がるまで確かではないからです。
仕込んだ量から、おおよその量は読めます。
実際に取れる量は、その年の進み方で変わります。
確かな数が出るのは、しぼってからです。
そこから、詰める容器も、売り先も決めます。
決める時間が、出来上がったあとに集まります。
四つとも、同じ一本のタンクのことです。
それでも、結果が出る時期だけが何か月も先にあります。
先にあるので、気づいたときには直す相手がもう無くなっています。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
酒造・醸造の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、この戻せなさは酒造・醸造でだけ起きるのですか?
生き物の働きに任せる時間があるからです。
組み立てる仕事なら、途中で外してやり直せます。発酵は、始まったら終わるまで進みます。
Q2.なぜ、少しずつ試すことが難しいのですか?
タンク一本が、試す最小の単位だからです。
小さく試すには、小さいタンクが要ります。本番と同じ条件にはならないので、そのまま当てはまるとはかぎりません。
Q3.なぜ、記録を減らせないのですか?
あとから測り直せないからです。
そのときの温度も様子も、過ぎてしまえば残りません。書いていなければ、来年の判断材料が無くなります。
Q4.なぜ、需要の読み違いが大きく響くのですか?
決める日と売る日が、何か月も離れているからです。
仕込みの日に決めた量が、そのまま何か月も先の在庫になります。間で調整する手立てがありません。
Q5.何から始めればよいですか?
まずタンク一本、仕込んだ日から出来上がるまでの記録を並べることからです。
どの時期の判断が結果に効いたかが見えます。来年、同じ時期に何を見るかの手がかりになります。
酒造・醸造の難しさは、造りの腕だけでは決まりません。
決める日と結果が出る日が、何か月も離れていることで決まります。
その間、足すことも引くこともできません。
だから、間の記録がそのまま来年の判断材料になります。
時間を縮められないなら、記録の残し方を変えるしかありません。
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酒造・醸造の六つの工程が、そのまま並んでいます。
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ブレインコミュニティ合同会社
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代表は製造設計を十四年、業務改善のコンサルティング、そしてAIの実装。
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