
さっきまで誰もいなかったのに、急に三人並んだ。
調剤薬局では、これが毎日起こります。
波があるのは、患者さんの来られ方が読めないからだけではありません。
何を出すことになるのかも、その瞬間まで分からないからです。
今回は、その分からなさがどこから来ているのかを分解します。
仕事の中身が届くのと、その仕事を始めるのが同じ瞬間だからです。
処方の中身が決まるのは、診察室です。
決まった中身が薬局に届くのは、患者さんが窓口に立たれたときです。
届いた瞬間から、待っている人がいます。
だから、届いてから確認するまでの間に、準備の時間がありません。
前もってできることと、その場でしかできないことが、混ざったまま窓口にあります。
六つの工程に分かれます。
一つ目、受付・準備。
二つ目、調剤・監査。
三つ目、服薬指導・会計。
四つ目、在庫管理・発注。
五つ目、レセプト作成・請求。
六つ目、情報管理・報告。
手間が生まれるのは、一つ目と五つ目です。
一つ目の受付・準備で、その日の仕事の中身が決まります。
五つ目のレセプト作成・請求で、一か月ぶんがまとめて返ってきます。
今回は、一つ目を分解します。
何が来るかを決めているのが、薬局の外だからです。
処方箋の中身は、医師が診察室で決めます。
決まった時点では、薬局はまだそれを知りません。
知るのは、患者さんが持ってこられた瞬間です。
その瞬間から、薬歴も在庫も保険も、一度に照らすことになります。
照らし終わるまで、次の一歩に進めません。
前回との違いだけを取り出す持ち方をしていないからです。
薬歴には、前に出した薬が並んでいます。
処方箋には、今回出す薬が並んでいます。
違うのは、たいてい一つか二つです。
それでも、どこが違うかは全部見ないと分かりません。
毎回、変わっていない部分まで読み直しています。
足りるかどうかが、処方箋を見たあとにしか決まらないからです。
棚にある数は、いつでも分かります。
必要な数は、処方箋が来るまで分かりません。
だから、足りないと分かるのは患者さんが目の前におられるときです。
そこから取り寄せると、その日には渡せません。
前もって多めに持てば、期限切れが増えます。
相手が診察中で、こちらから時間を決められないからです。
確かめたいことがあれば、医師に連絡します。
医師は診察中なので、すぐには出られません。
待っている間、患者さんも待っておられます。
こちらの段取りでは短くできません。
一件の照会が、あとの全員の待ち時間になります。
確認の順番が、前から後ろへ一本につながっているからです。
薬歴を見てから、処方箋と照らします。
照らしてから、在庫を確かめます。
確かめてから、調剤に回します。
前が終わらないと、後ろは始められません。
だから、人を横に並べても、一本の線は太くなりません。
四つとも、同じ一人の患者さんのことです。
それでも、四つが揃うのは窓口に立たれた瞬間です。
揃うのが同時なので、準備にあてられる時間がありません。
六つの工程ごとの一覧は、AI業務棚卸のページに置いてあります。
この記事では「そもそも、なぜその手間が生まれるのか」だけを書きました。
「AIを使って何ができるか」は、下のページに全部並んでいます。
調剤薬局の六つの工程と、できること一覧
Q1.なぜ、この波は調剤薬局でだけ起きるのですか?
仕事の始まりを、こちらで決められないからです。
予約で来られる仕事なら、いつ何をするかを先に置けます。処方箋は、診察が終わった順に届きます。並べ替えることができません。
Q2.なぜ、前もって準備しておくことができないのですか?
準備する対象が、届くまで分からないからです。
どの薬をどれだけ使うかは、処方箋に書いてあります。書いてあるものを見る前に用意できるのは、棚と人だけです。
Q3.なぜ、慣れた薬剤師でも時間が短くならないのですか?
確認する数が、腕ではなく処方の中身で決まるからです。
一枚に五種類あれば五種類ぶん照らします。速く読めても、読む対象の数は減りません。
Q4.なぜ、小さな薬局ほど大きく出るのですか?
窓口と調剤を同じ人が持っているからです。
人数が多ければ、受けるのと作るのを分けられます。分けられないと、窓口が止まった時間がそのまま調剤の遅れになります。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一日、処方箋が届いた時刻を書き出すことからです。
時刻を並べると、忙しさが人の数ではなく届き方で決まっていることが、自分の薬局の数字で分かります。
調剤薬局の忙しさは、患者さんの人数だけでは決まりません。
何が届くかが、届くまで分からないことで決まります。
決めているのは、診察室です。
だから、窓口の前に置ける準備には限りがあります。
届き方を変えられないなら、届いてからの照らし方を変えるしかありません。
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調剤薬局の六つの工程が、そのまま並んでいます。
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