
人を増やしても、繁忙期の忙しさは変わらない。
税理士事務所では、これがよく言われます。
忙しいのは、仕事の量が増えたからではありません。
待っていた仕事が、同じ日に一斉に動き出すからです。
今回は、その「一斉に動き出す」がどこから来ているのかを分解します。
資料が全部そろうまで、次の一手が始められない形になっているからです。
領収書はお客様の手元。通帳は銀行から。請求書は取引先から。
どれか一つでも欠けていると、記帳は止まります。
止まっている間、事務所の側にできることはありません。
そして、そろうときは、たいてい同じ時期にそろいます。
待ち時間が一斉に終わるので、そこから先が全部かさなります。
六つの工程に分かれます。
一つ目、相談・契約準備。
二つ目、情報収集・初期設定。
三つ目、日常業務・記帳代行。
四つ目、決算・申告業務。
五つ目、お客様報告・改善提案。
六つ目、請求・事務所管理。
山ができるのは、三つ目と四つ目です。
三つ目の日常業務・記帳代行で、待ち時間が生まれます。
四つ目の決算・申告業務で、その待ちが一斉に終わります。
今回は、三つ目を分解します。
同じお客様の同じ取引を、毎月ゼロから見分けているからです。
先月と同じ取引先、同じ内容、同じ勘定科目。
それでも、目で見て科目を当てるところから始めます。
先月の判断は、担当者の頭の中にしか残っていません。
担当が変われば、また一からです。
同じ判断を毎月やり直しているので、件数が増えれば時間もそのまま増えます。
何が足りないかを、事務所の側が数えて伝えているからです。
先月あった請求書が今月は無い。通帳の一部だけ届いていない。
その差は、事務所が並べて見ないと分かりません。
見て、数えて、電話をかけて、届くのを待ちます。
そのあいだ、記帳は一行も進みません。
足りない物の一覧が自動で出れば、待ち時間はそこから始まります。
前回どう判断したかが、資料の側に残っていないからです。
判断した本人は覚えています。しかし紙には書いてありません。
だから次の月も、同じ取引を同じように見分け直します。
この作業は、正しくやっても新しい価値は生まれません。
過去の判断がそろっていれば、下書きは出てきます。
人に残るのは、出てきた下書きのうち迷う数件だけです。
資料が「いつ届いたか」で並んでいて、「何の話か」で並んでいないからです。
届いた順に保存されているので、探すには時期を思い出す必要があります。
思い出せないときは、端から開いて確かめます。
開いても違えば、次を開きます。
この時間は、お客様に説明できる仕事ではありません。
中身で引ける形になっていれば、探す作業そのものが消えます。
増えた人に、判断の前提を渡すところから始まるからです。
お客様ごとの事情は、担当の頭の中にあります。
渡すには、担当が手を止めて説明しなければなりません。
止めた分だけ、その担当の仕事は後ろへ動きます。
だから、いちばん忙しい人ほど人を頼めません。
判断の前提が形になっていれば、渡すのに担当の時間は要りません。
六つの工程ごとの一覧は、業種ページに置いてあります。
この記事では「なぜそうなるのか」だけを書きました。
「どの作業をAIに任せられるか」は、下のページに全部並んでいます。
税理士事務所の六つの工程と、できること一覧
AIを実行から外す。ここが線です。
税理士事務所でいえば、資料の過不足を数えるところが機械、お客様に何をどう伝えるかが人です。
人がやること。どこを機械に任せるかを決めて、出てきた結果を確認する。
AIがやること。読み取り、下準備、下書き。そして処理の型を一度だけ作る。
機械がやること。計算、突き合わせ、写し、繰り返し。
AIは百件なら正確です。一万件になると壊れます。
だから、型はAIに作らせ、実行は機械に渡します。
Q1.なぜ税理士事務所でAIの活用が必要なのですか?
待ち時間が一斉に終わる形を、待っている間に崩せるからです。
資料がそろってからしか動けないのは、そろったかどうかを人が数えているからです。数える側を機械にすると、待ち時間の使い方が変わります。
Q2.なぜ、毎年同じ時期に同じ忙しさが来るのですか?
お客様の決算日が同じ月に集まっているからです。
集まっていること自体は変えられません。変えられるのは、集まる前にどこまで済ませておけるかです。
Q3.なぜ、AIに申告書まで任せてはいけないのですか?
責任を負うのが人だからです。
下書きは機械が作れます。しかし、その内容で出すと決めるのは資格を持つ人の仕事です。実行は機械に、判断は人に残します。
Q4.なぜ、職員が少ない事務所ほど効くのですか?
一人が記帳も連絡も決算も抱えていると、止まる場所が一つで済まないからです。
資料待ちの数え上げのように、誰がやっても同じ結果になる作業から先に渡すと、抱えている人の手が空きます。
Q5.何から始めればよいですか?
まず一社、資料を待っていた日数を数えることからです。
待ちが何日あったかが分かれば、その待ちを短くする値打ちがあるかどうかも分かります。
税理士事務所の繁忙期は、仕事が増えて起きるのではありません。
待っていた仕事が同じ日に動き出すから起きます。
待ちが生まれるのは、そろったかどうかを人が数えているからです。
数える側は、いま日常業務・記帳代行の工程で機械に渡せます。
渡したぶん、お客様と話す時間に戻れます。
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